学童を作るには?届出・設備基準・開業資金と補助金について

学童

学童を作るには何から始めるべきか、届出や基準、お金の面まで調べ始めると、自治体ごとに情報が分かれていて全体像をつかみにくいものです。

放課後に子どもを預ける場所は、共働き家庭の増加とともに地域で足りなくなっており、新しく始めたいと考える個人や法人も増えています。

一方で、子どもを預かる事業には国の法律と市町村の条例による決まりがあり、場所と人をそろえればすぐに始められるわけではありません。

学童を作るには何が必要なのか、届出・基準・手順・費用と補助金・開業後の運営まで順に確認していきます。

学童を作るには?

学童を作るには、事業を始める前に市町村へ届出を行うことと、国の基準をもとに市町村が条例で定める設備・職員・開所日数などの条件を満たすことの2つが必要です。

学童は、正式には「放課後児童健全育成事業」と呼ばれ、児童福祉法に位置づけられた事業です。

保護者が仕事などで昼間家にいない小学生に、放課後や長期休みの生活の場を提供する事業であり、誰が運営する場合でも、この法律と条例の決まりに沿って運営する必要があります。

学童の運営形態は3つ

学童は、誰が施設を作り、誰が運営するかによって、大きく3つの形に分かれます。

こども家庭庁の調査では、令和7年5月1日時点の全国25,928か所の放課後児童クラブのうち、運営形態の内訳は次のとおりです。

運営形態 内容 か所数 割合
公立公営 市町村が設置し、市町村が運営する 5,800か所 22.4%
公立民営 市町村が設置し、社会福祉法人やNPO法人、企業などに運営を委託する 13,543か所 52.2%
民立民営 民間が自ら設置し、自ら運営する 6,585か所 25.4%

民間の事業者が学童を始める方法には、市町村から運営の委託を受ける公立民営と、自ら施設を作って運営する民立民営の2つがあります。

公立民営は、市町村の公募に応募して選ばれる必要があり、場所や設備は市町村が用意します。

民立民営は、場所の確保から利用者の募集まで自ら行う代わりに、料金や独自のプログラムを自由に決めることができます。

市町村以外が始めるには事前の届出が必要

国・都道府県・市町村以外の者が学童を始める場合は、児童福祉法第34条の8第2項にもとづき、あらかじめ市町村長に届け出る必要があります。

届出は事業を開始する前に行うことが決められており、届け出た内容を変更したときは、変更の日から1か月以内に届け出ることが同じ条文の第3項で定められています。

事業を廃止したり休止したりする場合も、あらかじめ届け出る必要があります。

届出をすると、市町村は条例の基準を守って運営されているかを確認するため、報告を求めたり、施設に立ち入って検査したりすることができます。

学童の需要は増え続けている

こども家庭庁の調査では、令和7年5月1日時点の放課後児童クラブの登録児童数は1,570,645人で、過去最多を更新しました。

令和8年5月1日時点の速報値では、登録児童数は1,602,037人となり、初めて160万人を超えたと報じられています。

一方で、希望しても利用できなかった子ども、いわゆる待機児童は、令和7年に16,330人、令和8年の速報値で14,713人となっています。

待機児童は減ってきてはいるものの、地域によってはまだ受け皿が足りない状況が続いており、新しい学童が求められている地域は少なくありません。

このように、学童を作るには、事業を始める前に市町村へ届出を行うことと、国の基準をもとに市町村が条例で定める設備・職員・開所日数などの条件を満たすことの2つが必要です。

次は、学童を作るために満たすべき基準を確認します。

学童を作るために満たすべき基準

学童を作るために満たすべき主な基準は、子ども1人あたりおおむね1.65㎡以上の専用区画、おおむね40人以下ごとに2人以上の職員の配置、年250日以上の開所という3つです。

これらの基準は、国の「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」で定められています。

学童を作る際は、物件を探す段階から、この基準を満たせるかどうかを確認しておくことが欠かせません。

専用区画の面積

学童には、遊びや生活の場であり、静養もできる区画として「専用区画」を設ける必要があります。

専用区画の面積は、子ども1人につきおおむね1.65㎡以上でなければならないとされています。

1.65㎡はおよそ畳1枚分の広さで、たとえば40人を受け入れる場合は、専用区画だけでおおむね66㎡以上が必要になります。

専用区画は、開所している時間は原則として学童専用で使う必要があり、ほかの事業と同じ部屋を共用することは基本的に認められていません。

体調の悪い子どもが横になって休めるスペースや、手洗いの設備、トイレなども、子どもが安全に過ごすために必要な設備です。

職員の配置

学童の職員は、おおむね40人以下の子どものまとまりである「支援の単位」ごとに、2人以上置く必要があります。

そのうち1人は、保育士や教員免許などの基礎資格を持ち、都道府県の研修を修了した「放課後児童支援員」でなければなりません。

残りの1人は、資格のない「補助員」で代えることができます。

40人を超える子どもを受け入れる場合は、支援の単位を2つ以上に分け、それぞれに職員を配置する必要があります。

開所日数と開所時間

開所日数は、1年につき250日以上が原則とされています。

開所時間は、小学校の授業がある日は1日3時間以上、夏休みなど授業がない日は1日8時間以上が原則です。

実際の開所日数と時間は、地域の保護者の働き方や小学校の下校時刻などを考えて、施設ごとに決めることになります。

保護者の仕事が終わる時間まで預かれるかどうかは、利用者が学童を選ぶ際の大きな判断材料になるため、閉所時刻は需要に合わせて慎重に決めることが大切です。

基準は市町村の条例で決まる

国の基準をもとに、実際の基準は市町村がそれぞれ条例で定めています。

職員の人数の基準は、2019年の法改正で、市町村が地域の実情に応じて定めることのできる「参酌すべき基準」に変わりました。

そのため、同じ学童でも、市町村によって求められる条件が国の基準と異なる場合があります。

学童を作る地域が決まったら、その市町村の条例と届出の要綱を必ず確認しておきましょう。

このように、学童を作るために満たすべき主な基準は、子ども1人あたりおおむね1.65㎡以上の専用区画、おおむね40人以下ごとに2人以上の職員の配置、年250日以上の開所という3つです。

次は、学童を作る手順を確認します。

学童を作る手順

学童を作る手順は、地域の需要を調べ、物件と職員を確保し、市町村に事業開始届を出してから、利用料を決めて利用者を募集するという流れで進めます。

物件の契約や職員の採用を先に進めてしまうと、あとから基準や需要に合わないことがわかり、やり直しになる場合があります。

順番を守って進めることが、無駄な費用をかけずに開業するための近道です。

地域の需要と市町村の計画を調べる

最初に、学童を作りたい地域で、どれだけの需要があるかを調べます。

市町村が公表している待機児童の数や、小学校ごとの児童数、近くにある学童の定員と空き状況が、需要を判断する材料になります。

市町村は、子ども・子育て支援の計画の中で、放課後児童クラブをどれだけ整備するかを定めています。

市町村の担当課に相談すると、整備が必要とされている地域や、民間の参入を求めているかどうかを確認できる場合があります。

物件を探して設備を整える

需要のある地域が決まったら、専用区画の面積の基準を満たせる物件を探します。

小学校から子どもが歩いて安全に通える距離にあるかどうかは、利用者が学童を選ぶ際の重要な条件です。

建物の用途や消防設備の決まりによっては、子どもを預かる施設として使えない物件もあるため、契約の前に確認が必要です。

物件が決まったら、子どもの遊びと生活に必要な机や椅子、収納、静養のためのスペースなどを整えます。

放課後児童支援員と職員を確保する

学童を開業するには、支援の単位ごとに少なくとも1人の放課後児童支援員を確保する必要があります。

放課後児童支援員の資格を取るための研修は、都道府県が年に数回実施しているため、開業の直前に資格者を探し始めると間に合わないことがあります。

補助員やアルバイトも含めて、開所時間をすべてカバーできるだけの人数をシフトで組めるかどうかを確認しておきましょう。

事業開始届を出す

物件と職員の見通しが立ったら、市町村に事業開始届を提出します。

必要な書類は市町村によって異なりますが、福岡市の場合は次の書類を求めています。

  • 事業開始届
  • 事業概要書
  • 施設の概要書(施設周辺の地図、施設の見取り図、専用スペースの見取り図)
  • 定款その他基本約款の写し
  • 運営規程
  • 収支予算書および事業計画書

運営規程には、開所日や開所時間、利用料、職員の体制、緊急時の対応などを定めておく必要があります。

届出の書類をそろえる過程で、運営の仕組みが基準に合っているかを見直すことにもなるため、余裕をもって準備を始めることが大切です。

利用料を決めて利用者を募集する

民立民営の学童では、利用料を自ら決めることができます。

利用料は、家賃や人件費などの運営費をもとに、地域の公営の学童や近くの民間学童の料金と比べて決めるのが一般的です。

利用者の募集は、新年度の利用が決まる前の時期に合わせて始めると、入所の申込みを集めやすくなります。

説明会や見学会を開いて、施設の雰囲気や1日の過ごし方、安全の仕組みを保護者に直接伝えることが、申込みにつながります。

このように、学童を作る手順は、地域の需要を調べ、物件と職員を確保し、市町村に事業開始届を出してから、利用料を決めて利用者を募集するという流れで進めます。

次は、学童を作るのにかかる費用と補助金を確認します。

学童を作るのにかかる費用と補助金

学童を作るのにかかる費用は物件の取得や改装の方法で大きく変わり、市町村によっては開業時の整備費と開業後の運営費を補助する制度が用意されています。

学童の開業では、物件の契約と改装、設備の購入、職員の採用に加えて、利用者が集まるまでの運転資金も必要になります。

補助金を受けられるかどうかで、開業後の収支は大きく変わるため、開業する市町村の制度を事前に確認しておくことが重要です。

開業資金の目安

学童の開業資金について、マネーフォワードの開業向けの記事では、初期費用が1,500万〜1,800万円程度、ランニングコストが200万〜500万円程度、合わせて2,000万〜2,300万円程度が目安として紹介されています。

ただし、この金額は物件を取得するか賃貸するか、どの程度の改装が必要かによって大きく変わります。

既存の建物を借りて最低限の改装で始める場合と、新しく建物を建てる場合とでは、必要な資金に大きな差が出ます。

利用者が定員に達するまでは収入が少ないため、開業後半年から1年分程度の運転資金を見込んでおくと安心です。

市町村の運営費補助

市町村によっては、民間の学童の運営費を補助する制度を設けています。

大阪府高槻市では、令和8年度の募集要項で、民間学童保育室の運営費の補助として年額600万円または693万円が予定されていることが示されています。

補助額は職員の数によって変わり、入室児童が20人以上の場合が補助の対象で、10人以上20人未満の場合は減額されるとされています。

運営費の補助は開業後に別途申請が必要で、補助を受けるためには、定員や面積など市町村が定める条件を満たす必要があります。

環境整備の補助と補助を受けるための条件

開業時の改装や設備の購入にかかる費用を補助する制度を設けている市町村もあります。

高槻市では、新しく民間学童保育室を開所する事業者を対象に、整備費を補助する「民間学童保育室環境整備事業費補助金」を公募しています。

この補助を受けるには、定員40名以上であること、専用区画が子ども1人につき1.65㎡以上であることなどが条件とされています。

補助金の多くは公募の時期と開所の時期が決められているため、開業の計画を立てる段階で、市町村の公募のスケジュールに合わせておくことが大切です。

このように、学童を作るのにかかる費用は物件の取得や改装の方法で大きく変わり、市町村によっては開業時の整備費と開業後の運営費を補助する制度が用意されています。

次は、学童を作ったあとの運営で必要になる仕組みを確認します。

学童を作ったあとの運営で必要になる仕組み

学童を作ったあとの運営では、子どもの出欠席と到着・帰宅の管理、保護者との連絡と記録、事故の報告と保険という、子どもの安全を守るための仕組みを開所の時点から整えておく必要があります。

開業の準備では、物件や届出に目が向きがちですが、毎日の運営で使う仕組みが整っていないと、開所してから職員の手が足りなくなります。

子どもを預かる事業では、仕組みの不備がそのまま安全の問題につながるため、開所前に準備しておくことが重要です。

出欠席と到着・帰宅の管理

国の「放課後児童クラブ運営指針」では、子どもの出欠席についてあらかじめ保護者からの連絡を確認し、連絡なく来所が遅れた子どもについては速やかに状況を把握して対応することが求められています。

来るはずの子どもが来ていない場合は、職員が保護者や学校に連絡して、子どもがどこにいるのかを確かめなければなりません。

開業したばかりの学童は職員の数が少ないことが多く、到着の確認や所在確認に人手を取られると、ほかの子どもを見る人が足りなくなります。

LINE入退クラウドは、子どもがQRコードやICカードをかざすだけで、到着と帰宅の時刻を保護者のLINEに自動で通知する入退室管理システムです。

WebPush入退クラウドは、LINEを使わずにブラウザのプッシュ通知で保護者に入退室を知らせる仕組みで、月額4,950円の定額のため、毎日通う子どもが多い学童でも通知数による追加費用がかかりません。

開所の時点から入退室の記録と保護者への通知を自動にしておけば、到着の確認や問い合わせへの対応にかかる手間を最初から減らすことができます。

保護者との連絡と記録

保護者とは、欠席や早退の連絡、その日の子どもの様子、行事のお知らせなど、毎日さまざまな連絡をやりとりします。

連絡の手段が電話や紙の連絡帳だけだと、職員が対応に追われ、記録も残りにくくなります。

運営指針では、日々の子どもの状況や支援の内容を記録することや、子どもの出欠席を記録した日誌をつけることが求められています。

連絡と記録の方法を開所前に決めておくことで、職員が変わっても同じ対応ができる運営につながります。

事故の報告と保険

学童では、遊びの中でのけがや、通所の途中での事故が起こる可能性があります。

市町村の要綱では、事故が起きた場合に速やかに市町村へ報告することが求められているところがあります。

けがや事故に備えて、子どもを対象とした傷害保険や、施設の賠償責任保険に加入しておくことも欠かせません。

事故が起きたときの連絡の順番や、保護者への説明の方法をあらかじめ職員全員で共有しておくことで、いざというときに落ち着いて対応できます。

このように、学童を作ったあとの運営では、子どもの出欠席と到着・帰宅の管理、保護者との連絡と記録、事故の報告と保険という、子どもの安全を守るための仕組みを開所の時点から整えておく必要があります。

株式会社エクレ

2012年より学習塾を経営し、10年以上にわたり学習塾の経営・運営に携わる。他塾のコンサルティング・新規立ち上げ支援も手がけてきた。塾経営の現場で感じたコスト・利便性の課題を起点に、学習塾・スクール向け入退室管理システム「LINE入退クラウド」(2025年)「WebPush入退クラウド」(2026年)を開発・運営。Webサイト制作・SEO・デジタルマーケティング支援も行っている。