学習塾の経費に何が含まれる?勘定科目と節税のポイントについて

学習塾

学習塾を開業・経営するなかで、何が経費として認められるのかがわからず、計上漏れや確定申告での混乱が起きることは珍しくありません。

「これは計上できるのか」と迷うたびに手が止まり、結果的に申告額が少なくなって税負担が増えてしまうケースも多いです。

ただし、何でも認められるわけではなく、事業との関連性が明確でない支出を計上すると税務調査のリスクが高まります。

学習塾の経費として認められるものを正しく把握することで、計上漏れを防ぎ、適切な節税を実現することができます。

学習塾の経費に何が含まれる?

学習塾の経費は、毎月一定額が発生する固定費と、売上や活動量に応じて変動する変動費の2種類に大別されます。

固定費の代表は家賃・人件費・通信費であり、変動費の代表は広告宣伝費・教材費・交通費です。

これらを正確に把握して計上することが、学習塾経営における適切な経費管理の出発点になります。

このように、学習塾の経費は、毎月一定額が発生する固定費と、売上や活動量に応じて変動する変動費の2種類に大別されます。

次は、固定費の各項目を詳しく見ていきます。

学習塾の固定費一覧

学習塾の固定費は毎月一定額が発生するコストであり、家賃・人件費・通信費が主な項目です。

売上が増えても減っても基本的に変わらないため、経営の安定性を左右する最も重要なコスト構造です。

家賃・光熱費

教室として使用している物件の家賃は「地代家賃」として経費に計上できます。

光熱費(電気・ガス・水道)は「水道光熱費」として計上します。

自宅の一室を教室として使用している場合は、事業に使用している割合(床面積や使用時間の比率)に応じて按分して計上することができます。

全額を経費にすることはできませんが、合理的な根拠に基づいた按分であれば問題ありません。

費用の種類 勘定科目 備考
教室の家賃 地代家賃 全額経費
電気・ガス・水道 水道光熱費 自宅兼用の場合は按分
敷金・礼金 敷金(資産計上)・地代家賃 礼金は経費、敷金は資産

人件費・給与

アルバイト講師や事務スタッフに支払う給与・時給は「給料賃金」として計上します。

社会保険料の事業主負担分は「法定福利費」として別途計上します。

法定福利費は見落としやすい経費のひとつであるため、給与計算のタイミングで一緒に記帳しておく習慣をつけましょう。

個人事業主の場合、自分自身への「給与」は経費にできません。

ただし、青色申告者が家族(配偶者・子ども)を塾の業務に従事させている場合は、「青色事業専従者給与」として一定額を経費に計上できます。

通信費・システム費

固定電話・携帯電話・インターネット回線の利用料は「通信費」として計上します。

生徒管理システム・会計ソフト・予約管理ツールなどのサブスクリプション費用も「通信費」または「システム費用(雑費)」として計上できます。

業務と私用を兼ねて使用している携帯電話は、使用割合に応じて按分することが必要です。

このように、学習塾の固定費は毎月一定額が発生するコストであり、家賃・人件費・通信費が主な項目です。

次は、活動量に応じて変動する変動費の内訳を見ていきます。

学習塾の変動費一覧

学習塾の変動費は集客・授業・講師活動の規模によって変動し、広告宣伝費・教材費・研修費が主な項目です。

コントロールしやすい費用でもあるため、経営改善の際にまず見直す対象になります。

広告宣伝費(チラシ・Web広告)

生徒募集のために支出するチラシ作成・印刷・折り込み費用は「広告宣伝費」として計上します。

Google広告・SNS広告・塾ポータルサイトへの掲載費用も同様に「広告宣伝費」です。

ポスティングを外部業者に依頼した場合の費用も「広告宣伝費」に含まれます。

自分でポスティングをした場合の交通費は「旅費交通費」として別途計上します。

費用の種類 勘定科目
チラシ作成・印刷 広告宣伝費
折り込み・ポスティング依頼費 広告宣伝費
Web広告・SNS広告 広告宣伝費
塾ポータルサイト掲載費 広告宣伝費

教材費・消耗品費

生徒に使わせるテキスト・問題集・プリント用紙・筆記用具等の購入費は「消耗品費」として計上します。

塾が独自に教材を仕入れて生徒に販売する場合は「仕入高」として計上し、教材の売上と対応させます。

コピー用紙・インク・ホワイトボードマーカーなど、業務で使用する消耗品は1点あたり10万円未満であれば「消耗品費」として一括経費計上できます。

プリンター・パソコン・大型ホワイトボードなど10万円以上の物品は「工具器具備品」として資産計上し、減価償却によって複数年にわたって経費化します。

研修費・交通費

講師の指導スキル向上のためのセミナー参加費・書籍代は「研修費」または「新聞図書費」として計上できます。

塾の経営に関わる書籍・教育業界の専門誌・受験情報誌の購入費も「新聞図書費」として経費計上できます。

業務上の移動(講師研修への参加・教材の仕入れ・金融機関への訪問など)にかかる電車・バス代は「旅費交通費」として計上します。

自家用車を業務に使用した場合のガソリン代・駐車場代・車検費用なども、業務使用割合に応じて按分して「旅費交通費」または「車両費」として計上できます。

このように、学習塾の変動費は集客・授業・講師活動の規模によって変動し、広告宣伝費・教材費・研修費が主な項目です。

次は、学習塾特有の経費と勘定科目を整理します。

学習塾特有の経費と勘定科目

学習塾には模試代・入試情報誌・備品の減価償却など、他業種では発生しにくい特有の経費項目があります。

これらは見落とされやすく、計上漏れが起きやすい項目でもあるため、確認しておくことが重要です。

模試代・外部テスト費用

生徒に受験させる模試の受験料を塾が立替払いする場合、後で生徒から回収する前提であれば「立替金」として処理します。

塾が費用を負担して生徒に無料で模試を受けさせる場合は「研修費」または「福利厚生費」に近い形で処理できますが、事業との関連性を明確にしておくことが重要です。

入試情報誌・志望校データ

高校・大学の入試情報誌・合格最低点データ集・模試の分析レポートなど、指導に必要な情報収集のための支出は「新聞図書費」として経費計上できます。

受験情報の収集は塾の指導品質に直結するため、事業関連性が明確であり経費として認められやすい項目です。

教室の内装・備品

教室開設時に購入した椅子・机・棚・ホワイトボード・エアコンなど、10万円以上の備品は「工具器具備品」として資産計上し、耐用年数に応じて減価償却します。

主な備品の法定耐用年数の目安は以下のとおりです。

備品の種類 法定耐用年数の目安
エアコン(家庭用) 6年
パソコン 4年
机・椅子(金属製) 15年
机・椅子(木製) 8年
コピー機・プリンター 5年

開業時にまとめて多くの備品を購入した場合、減価償却の計算が複雑になるため、会計ソフトや税理士を活用することをおすすめします。

保険料

教室内での事故・生徒のケガなどに備えた損害保険の保険料は「損害保険料」として経費に計上できます。

事業用と個人用を兼ねた保険の場合は、事業に関係する部分のみを按分して計上することが必要です。

このように、学習塾には模試代・入試情報誌・備品の減価償却など、他業種では発生しにくい特有の経費項目があります。

次は、経費にできるかどうか迷いやすいグレーゾーンを見ていきます。

経費にできるかグレーゾーンの項目

学習塾の経費のグレーゾーンは「事業との関連性を合理的に説明できるかどうか」が判断の基準になります。

すべてを経費にしようとすると税務調査のリスクが高まり、逆に慎重になりすぎると節税機会を逃します。

判断の基準は「事業との関連性を合理的に説明できるかどうか」です。

自宅兼教室の家賃・光熱費

自宅の一室を教室として使用している場合、家賃・光熱費の一部を按分して経費に計上できます。

按分の根拠としては、教室として使用している床面積の割合・使用時間の割合などが一般的に認められます。

「全体の30%を教室として使用している」という場合、家賃の30%を経費として計上することが合理的です。

按分の根拠となる計算式・面積・時間帯の記録を残しておくと、税務調査の際に説明しやすくなります。

塾経営に関連した食事代・接待費

保護者との面談後に食事をした場合・講師との打ち合わせ時の飲食費は「接待交際費」として計上できる場合があります。

ただし、一人での食事代は原則として経費になりません。

接待交際費として計上する場合は、誰と・何の目的で食事をしたかを記録(メモ・レシートの裏書き等)しておくことが重要です。

服装・身だしなみ費用

スーツ・ビジネスカジュアルなど、仕事で着用する衣類は原則として経費として認められません。

ただし、塾のユニフォームとして作成したポロシャツや、生徒への模擬授業時にのみ着用するものであれば、業務専用品として経費に計上できる場合があります。

業務専用かどうかが判断の分かれ目であるため、プライベートでも着られる衣類は経費としての主張が難しいです。

資格取得費用

塾の経営・指導に関連する資格(英語検定・数学検定の上位資格・塾経営に関するセミナー等)の取得費用は「研修費」として経費計上できる場合があります。

ただし、新たな職業に就くための資格取得費用(まったく別分野の国家資格など)は経費として認められません。

このように、学習塾の経費のグレーゾーンは「事業との関連性を合理的に説明できるかどうか」が判断の基準になります。

次は、節税につながる経費活用のポイントを見ていきます。

学習塾経営の節税につながる経費活用のポイント

学習塾の節税で最も効果が大きいのは、青色申告の特別控除を活用しながら経費を漏れなく計上することです。

節税は「経費を無理に増やす」ことではなく、「正当な経費を漏れなく計上する」ことが基本です。

青色申告65万円控除を最大限活用する

青色申告特別控除は、複式簿記で記帳し確定申告をe-Taxで行うことで、最大65万円を所得から控除できる制度です。

課税所得が65万円分少なくなるため、所得税率20%の場合で最大13万円の節税効果があります。

開業届と同時に「青色申告承認申請書」を提出し、会計ソフトで複式簿記の記帳を管理することで、この控除を確実に受けることができます。

小額減価償却資産の特例を活用する

青色申告者は「少額減価償却資産の特例」を利用することで、30万円未満の資産を購入年度に一括経費計上できます。

通常は10万円以上の資産を数年にわたって減価償却しますが、この特例を使えばパソコン・プリンター・タブレットなどを購入した年度にまとめて経費にできます。

年間合計300万円まで適用できるため、開業初年度に備品を揃える際に積極的に活用しましょう。

経費の領収書・記録を必ず保存する

経費として計上したすべての支出について、領収書・レシート・振込明細を保存しておくことが義務です。

電子取引(ネットでの支払い)についても、2024年以降は電子データでの保存が義務化されています。

領収書の保存期間は青色申告の場合7年間であるため、毎月ファイリングする習慣をつけることが、後から困らないための最善策です。

税理士に相談するタイミング

売上が年間500万円を超えてきた段階・従業員が増えてきた段階・フランチャイズ加盟を検討している段階では、税理士への相談を検討することをおすすめします。

税理士費用(顧問料)自体も「支払手数料」として経費に計上できるため、節税効果と相談コストを比較して判断しましょう。

このように、学習塾の節税で最も効果が大きいのは、青色申告の特別控除を活用しながら経費を漏れなく計上することです。

「正当な経費を正しく計上する」という基本を徹底することが、安心して塾経営を続けるための財務管理の土台になります。

株式会社エクレ

2012年より学習塾を経営し、10年以上にわたり学習塾の経営・運営に携わる。他塾のコンサルティング・新規立ち上げ支援も手がけてきた。塾経営の現場で感じたコスト・利便性の課題を起点に、学習塾・スクール向け入退室管理システム「LINE入退クラウド」(2025年)「WebPush入退クラウド」(2026年)を開発・運営。Webサイト制作・SEO・デジタルマーケティング支援も行っている。