塾のスケジュール管理をどのように行うか、専用システムを導入すべきか悩んでいる経営者の方もいらっしゃるでしょう。
授業の時間割、講師のシフト、教室の使用状況、振替授業の調整など、塾運営には様々な管理が必要です。
市場には、これらを一元管理できる商品が多数存在しますが、高額な費用を払ってまで導入する価値があるのか、無料のツールでは対応できないのか、慎重に判断する必要があります。
10年以上学習塾を運営してきた経験から、塾のスケジュール管理システムとは何か、本当にシステムが必要なのか、そして塾に本当に必要な機能は何かをお伝えします。
塾のスケジュール管理システムとは
塾のスケジュール管理システムとは、授業の時間割管理、講師のシフト調整、教室の使用状況管理、振替授業の対応などを一元的に管理するシステムです。
スケジュール管理システムには、様々な機能が搭載されています。授業の時間割を登録すると、曜日別・時間別の授業一覧が表示され、どの時間にどの授業があるかが一目で分かります。生徒ごとの受講スケジュールも確認でき、「この生徒は月曜と木曜に来る」といった情報を管理できます。
講師のシフト管理機能も充実しています。各講師の勤務可能時間を登録し、授業への割り当てを行います。講師の重複や空き時間が視覚的に分かるため、効率的なシフト作成ができます。また、講師の勤務時間の集計や給与計算との連携も可能です。
教室の使用状況管理もできます。複数の教室がある場合、どの教室がいつ空いているか、どの教室にどの授業を割り当てるかを管理します。ダブルブッキングを防ぎ、教室を効率的に活用できます。
振替授業の調整機能も備えています。生徒が欠席した場合、空いている時間枠を探して振替授業を設定します。講師の都合、教室の空き状況、生徒の都合を照らし合わせて、最適な振替日時を提案してくれるシステムもあります。
スケジュールの共有機能もあります。講師や生徒がアプリやWebサイトから自分のスケジュールを確認できるため、問い合わせ対応の手間が削減されます。変更があった場合も、自動的に通知が届く機能があります。
予定の繰り返し設定や、長期休暇期間の特別スケジュール設定など、細かい調整も可能です。季節講習の時間割を別に作成したり、祝日の授業をスキップしたりする設定ができます。
他のシステムとの連携も特徴です。生徒管理システム、請求管理システムなどと統合され、スケジュールに基づいて自動的に授業料が計算されるなど、業務の自動化が進みます。
授業時間割から講師シフト、教室管理、振替対応まで、スケジュールに関する業務を包括的にカバーするのがスケジュール管理システムです。
それでは、こうしたスケジュール管理システムは本当に必要なのか見ていきましょう。
スケジュール管理システムは本当に必要なの?
スケジュール管理システムの必要性を検討すると、高額なコスト、汎用的で自塾に合わない仕様、不要な機能の多さという問題があります。
高額なコストは大きな障壁です。スケジュール管理機能を含む総合的な塾管理システムは、初期費用が数十万円、月額費用が数万円かかるのが一般的です。スケジュール管理に特化したシステムでも、月額数千円〜数万円の費用が発生します。年間で数十万円の出費になることを考えると、その投資に見合う効果があるのか慎重に判断する必要があります。
汎用的で自塾に合わない問題も深刻です。スケジュール管理システムは、様々な塾に対応できるよう汎用的に設計されているため、自塾独自のスケジュール管理方法に合わないことがあります。例えば、不規則な時間割を組んでいる塾、講師の裁量で柔軟に時間を調整している塾、特殊な授業形態を取っている塾などでは、システムの仕様と実態が合わず、使いづらさを感じます。
システムが想定している「標準的な塾」の運営方法に、自塾を合わせなければならないケースもあります。これでは本末転倒です。カスタマイズを依頼すると追加費用が発生し、さらにコストが膨らみます。
不要な機能が多いことも問題です。詳細な勤怠管理、複雑な給与計算連携、座席の自動割り当てなど、高度な機能が搭載されていても、実際には使わないケースが多いです。必要なのは「いつ誰がどこで授業をするか」という基本的な情報だけという塾がほとんどです。
操作の複雑さも障壁になります。多機能であるがゆえに、管理画面が複雑で、使いこなすまでに時間がかかります。スケジュールを登録する、変更する、確認するといった基本的な操作でも、画面遷移が多く、手間がかかることがあります。
柔軟性の欠如も問題です。急な変更に対応しづらい、イレギュラーなスケジュールが組みにくいなど、システムの制約によって、かえって運営が硬直化することがあります。紙やホワイトボードであれば、すぐに書き換えられることが、システムでは複雑な操作が必要になるケースもあります。
データ入力の手間も考慮が必要です。最初にすべてのスケジュールをシステムに入力する作業は、かなりの時間がかかります。また、変更のたびにシステムを更新する手間も発生します。
システムトラブルのリスクもあります。インターネット接続が切れた、システムがダウンした、アップデートで不具合が発生したなど、システムに依存していると、トラブル時に業務が止まってしまいます。
高コスト、自塾への不適合、不要な機能の多さから、スケジュール管理システムの必要性には疑問が残ります。
次に、なぜGoogleカレンダーやホワイトボードで十分なのか確認していきましょう。
Googleカレンダーやホワイトボードで十分な理由
スケジュール管理は、Googleカレンダーやホワイトボード、Excelといった無料ツールで十分対応でき、柔軟性も高く、操作も簡単です。
Googleカレンダーは無料で利用でき、非常に強力なスケジュール管理ツールです。授業ごとにカレンダーを作成し、色分けして表示することで、視覚的に分かりやすいスケジュール表が作れます。繰り返し予定の設定もできるため、「毎週月曜日18時〜19時」といった定期的な授業も簡単に登録できます。
共有機能も充実しています。講師に対して閲覧権限や編集権限を与えることで、各自がスケジュールを確認したり、変更したりできます。変更があった場合は、自動的に通知が届くため、連絡漏れも防げます。
スマートフォンからもアクセスできるため、外出先でもスケジュールを確認できます。また、Googleアカウントがあれば誰でも使えるため、特別な登録や費用は不要です。
ホワイトボードも有効なツールです。教室の壁にホワイトボードを設置し、時間割を書き込むことで、誰でも一目でスケジュールが分かります。変更があればすぐに書き換えられるため、柔軟性が非常に高いです。
講師の出勤予定、教室の使用状況なども、ホワイトボードに書き込むことで共有できます。デジタルツールと違い、システムトラブルの心配もなく、電源も不要です。
Excelやスプレッドシートも活用できます。時間割表をExcelで作成し、印刷して掲示したり、共有フォルダに保存して講師が閲覧できるようにしたりします。自由にレイアウトをカスタマイズでき、自塾の運営方法に合わせた形式で作成できます。
これらのツールの組み合わせも効果的です。基本的なスケジュールはGoogleカレンダーで管理し、当日の細かい調整はホワイトボードで行う、といった使い分けができます。
柔軟性が高いことも重要です。急な変更があっても、すぐに対応できます。システムのように複雑な操作は不要で、直感的に変更できるため、時間をかけずに対応できます。
コストがかからないことも大きなメリットです。Googleカレンダーは完全無料、ホワイトボードは数千円の初期費用だけ、Excelは多くの場合すでに持っているツールです。ランニングコストもかかりません。
操作が簡単なことも利点です。Googleカレンダーの基本操作は、多くの人が日常的に使っているため、特別な研修は不要です。ホワイトボードは文字を書くだけ、Excelも基本的な操作ができれば十分です。
誰でもアクセスできることも重要です。システムの場合、アカウント登録やログインが必要ですが、ホワイトボードは教室に来れば誰でも見られます。Googleカレンダーも、共有リンクを送るだけで閲覧できます。
無料、柔軟、簡単という特性により、スケジュール管理は十分対応できます。
それでは、スケジュール管理以外に塾で本当に必要な機能は何なのか見ていきましょう。
スケジュール管理以外に本当に必要な機能
スケジュール管理以外に塾で本当に必要な機能は、保護者が最も求めている入退室の安全確認です。
塾経営者は、スケジュール管理の効率化に目が向きがちですが、保護者が最も重視しているのはスケジュール管理ではありません。保護者にとって最大の関心事は、「子どもが安全に塾に着いたか」「何時に帰ってくるか」という安全確認です。
授業のスケジュールがどれだけ効率的に管理されていても、保護者にはその効果は見えません。保護者が実感できる価値は、自分の子どもに関する情報です。特に、子どもの安全に関する情報は、保護者の最大の関心事です。
特に小学生や中学生の場合、夕方から夜にかけて一人で通塾するため、保護者は常に不安を感じています。無事に塾に到着したか、ちゃんと授業を受けているか、帰りは何時になるかを知りたいというニーズは、スケジュール管理の効率化よりもはるかに強いです。
従来は、生徒が塾に到着したら保護者に電話で連絡する、または保護者から「着きましたか?」と確認の電話がかかってくる、という対応をしていました。しかし、生徒数が増えると、一人ひとりに連絡するのは非常に手間がかかります。
欠席連絡がなく生徒が来なかった場合は、さらに大変です。「事故に遭っていないか」「どこかに寄り道していないか」を確認するために、保護者に連絡する必要があります。授業開始前の忙しい時間に、誰が来て誰が来ていないかを確認し、来ていない生徒の保護者に電話をかける作業は、大きな負担です。
この課題を解決するのが、入退室通知システムです。生徒がICカードやQRコードをかざすだけで、自動的に保護者に「お子様が塾に到着しました」という通知が届きます。保護者は、スマートフォンで通知を受け取ることで、安心できます。
塾側も、確認作業の手間が大幅に削減されます。誰が来て誰が来ていないかが自動的に記録されるため、目視で確認する必要がありません。また、来ていない生徒については、保護者に通知が届かないことで、保護者自身が気づき、塾に連絡を入れるという流れができます。
保護者満足度の向上にも直結します。「この塾は子どもの安全を大切にしている」という印象を与えることができ、安心して通わせてもらえます。入退室通知がある塾とない塾では、保護者の安心感が大きく異なります。
退塾防止の効果もあります。保護者が満足していれば、継続して通ってもらえる可能性が高まります。逆に、安全面での不安があると、それが退塾の理由になることもあります。
スケジュール管理は既存のツールで十分対応できますが、入退室の安全確認こそ、システム化すべき機能です。
最後に、塾に本当に必要なシステムをどう選ぶべきか確認しましょう。
塾に本当に必要なシステムの選び方
塾に本当に必要なシステムの選び方は、スケジュール管理は無料ツールで対応し、入退室通知だけをシステム化することです。
スケジュール管理は、これまで見てきた通り、Googleカレンダーやホワイトボード、Excelで十分対応できます。高額なシステムを導入する必要はなく、無料のツールで効率的に管理できます。自塾の運営に合わせて柔軟に調整でき、講師も使い慣れているため、スムーズに運用できます。
一方、入退室通知は、手作業では対応しきれない部分です。生徒が増えれば増えるほど、確認と連絡の手間が増大します。この部分こそ、システム化することで大きな効果が得られます。
入退室通知システムは、シンプルな機能だけに特化しているため、導入コストも運用コストも抑えられます。多機能な総合管理システムのような高額な費用はかからず、月額数千円〜数万円程度で利用できるサービスが多く存在します。
操作もシンプルです。生徒がICカードやQRコードをかざすだけで、自動的に保護者に通知が届きます。複雑な操作や設定は不要なため、ITに不慣れな講師でも簡単に使えます。
保護者側も、メールやLINEで通知を受け取るだけなので、手間がかかりません。特にLINEでの通知は、普段から使っているツールなので、保護者にとって非常に便利です。専用アプリをインストールする必要もなく、気軽に利用できます。
段階的に導入することも可能です。まずは入退室通知システムだけを導入し、効果を実感してから、必要に応じて他の機能を追加していくことができます。いきなり多機能システムを導入して失敗するリスクを避けられます。
コストパフォーマンスも優れています。保護者満足度の向上、退塾防止、確認作業の削減という効果を考えると、入退室通知システムへの投資は十分に価値があります。一方、スケジュール管理システムに高額な費用を払っても、得られる効果は限定的です。
優先順位を明確にすることが重要です。限られた予算の中で、何にお金をかけるべきかを考えたとき、保護者が最も求めている入退室通知を優先すべきです。スケジュール管理は無料のツールで対応し、浮いた予算を入退室通知システムに充てることで、最大の効果が得られます。
既存のツールとの併用も効果的です。スケジュール管理はGoogleカレンダーで、入退室通知は専用システムで、というように、それぞれに適したツールを組み合わせることで、無駄なコストをかけずに効率的な運営が実現します。
入退室通知に特化したシステムとしては、LINEを活用した「LINE入退クラウド」のようなサービスもあります。保護者が普段使っているLINEで通知を受け取れるため、使いやすさと満足度の向上が期待できます。
スケジュール管理は無料ツールで、入退室通知はシステムで、という使い分けにより、コストを抑えながら最大の効果を得ることができます。