英語教育の重要性が高まる中、英語塾の出店は増えています。
しかし、適切な相場を把握しないまま月謝を決めてしまい、「安すぎて利益が出ない」「高すぎて生徒が集まらない」という失敗に陥るケースは少なくありません。
弊社では10年以上学習塾を経営してきた経験から、料金設定が経営の成否を分ける重要な要素であることを実感しています。
本記事では、英語塾の月謝相場を学年別・コース別に詳しく解説し、高単価でも選ばれる差別化戦略と安定した収益を確保するための価格設計まで、実践的なノウハウをお伝えします。
英語塾の月謝相場は?
英語塾の月謝相場は、小学生5,000円~10,000円、中学生8,000円~15,000円、高校生10,000円~20,000円程度で、学年が上がるにつれて段階的に高くなります。
英語塾の料金設定は、対象学年だけでなく指導形態やコース内容によっても大きく変動します。 小学生向けの英会話中心のコースと、高校生向けの受験対策コースでは、必要な指導レベルも保護者の期待値も異なるため、同じ料金で提供することは現実的ではありません。 まずは、学年別・指導形態別の相場感を正確に把握することが、適切な料金設定の出発点となります。
小学生向け英語塾の月謝相場
小学生向け英語塾の月謝相場は、月額5,000円から10,000円程度です。
小学生向けは英会話や英語の基礎を楽しく学ぶコースが中心で、週1回60分のレッスンで月額5,000円から7,000円が一般的です。 英検対策を含むコースや週2回のレッスンでは、月額8,000円から10,000円という設定が多く見られます。 低学年(1年生~3年生)は遊びや歌を取り入れた導入的な内容が多く、月額5,000円から6,000円と比較的手頃な価格帯です。 高学年(4年生~6年生)になると中学準備や英検5級~3級対策が加わり、月額7,000円から10,000円へと上がる傾向があります。 小学生は保護者が「英語に慣れる」程度の期待で通わせるケースも多いため、過度に高額にすると敬遠されるリスクがあります。
小学生向けは基礎学習が中心のため、月額5,000円から10,000円という手頃な価格帯が主流です。
中学生向け英語塾の月謝相場
中学生向け英語塾の月謝相場は、月額8,000円から15,000円程度です。
中学生向けは学校の定期テスト対策と高校受験対策が主目的となり、より専門的な指導が求められます。 集団指導で週1回90分のレッスンなら月額8,000円から10,000円、個別指導や少人数制なら月額12,000円から15,000円が相場です。 中1・中2は基礎固めが中心で月額8,000円から12,000円、中3の受験学年になると月額12,000円から15,000円へと上がる設定が一般的です。 英検対策や英作文特訓などの専門コースを追加すると、月額15,000円から20,000円という価格帯も見られます。 中学生は成績向上という明確な目標があるため、結果が出せれば高めの料金でも保護者の納得を得やすい傾向があります。
中学生向けは定期テストや受験対策が加わるため、月額8,000円から15,000円と小学生より高めの設定が可能です。
高校生向け英語塾の月謝相場
高校生向け英語塾の月謝相場は、月額10,000円から20,000円程度です。
高校生向けは大学受験対策が中心となり、高度な読解力やリスニング力が求められるため、最も高額な料金設定となります。 集団指導で週1回120分のレッスンなら月額10,000円から13,000円、個別指導なら月額15,000円から20,000円が相場です。 高1・高2は基礎から応用までの学力養成で月額10,000円から15,000円、高3の受験学年は志望校別対策や過去問演習が加わり月額15,000円から20,000円となります。 難関大学対策や医学部受験英語など、超専門的なコースでは月額25,000円から30,000円という設定も珍しくありません。 高校生は将来を左右する大学受験という明確な目標があるため、成果が出れば高単価でも十分に受け入れられます。
高校生向けは大学受験対策という専門性の高さから、月額10,000円から20,000円という高単価設定が可能です。
指導形態別の月謝相場(個別・少人数・集団)
指導形態によって月謝相場は大きく異なり、個別指導は集団指導の1.5倍から2倍程度の料金設定が一般的です。
集団指導(10名以上)は、中学生で週1回90分が月額8,000円から10,000円、高校生で週1回120分が月額10,000円から12,000円が相場です。 少人数制(4名~8名)は、中学生で月額10,000円から13,000円、高校生で月額12,000円から16,000円となります。 完全個別指導(1対1または1対2)は、中学生で月額15,000円から20,000円、高校生で月額18,000円から25,000円が相場です。 個別指導は一人ひとりの理解度に合わせたきめ細かい指導ができるため、集団指導の1.5倍から2倍の料金でも保護者の納得を得やすい傾向があります。 また、オンライン個別指導の場合は対面より若干安く、月額12,000円から18,000円程度の設定が多く見られます。
指導形態による料金差は明確で、個別指導は集団指導の1.5倍から2倍の相場となります。
地域別の月謝相場の違い
地域によって月謝相場には1.3倍から1.8倍程度の差があり、立地条件を踏まえた価格設定が必要です。
東京・大阪などの大都市圏では、中学生の個別指導で月額15,000円から18,000円が相場ですが、地方都市では10,000円から13,000円程度となります。 これは家賃や講師の人件費の地域差に加え、世帯所得や教育費への投資意識の違いも影響しています。 ただし、オンライン授業の普及により、地方でも都市部と同等の専門性を提供できれば、都市部並みの料金設定が可能になってきています。 自塾の商圏内で競合調査を徹底し、その地域で保護者が「適正」と感じる価格帯を見極めることが重要です。
英語塾の月謝相場は、学年、指導形態、地域によって月謝相場は5,000円から20,000円と幅があるため、自塾の条件に合わせた適正価格を見極めることが大切です。
ただし、相場を知っただけでは収益の最大化は実現できず、相場以上の料金でも選ばれる付加価値の提供が必要です。
相場より高い月謝で選ばれる塾にするには?
相場より高い月謝設定でも生徒に選ばれるには、明確な専門性と他塾にはない独自の価値提供が不可欠です。
英語塾は競合が多く、価格だけで勝負すると消耗戦に陥りがちです。 私が塾経営で実践してきた経験から、「この塾でなければ学べない」という独自性を確立できれば、料金が高くても選ばれることを確信しています。 ここでは、高単価設定を可能にする具体的な差別化戦略を解説します。
英検・TOEIC対策など専門コースで差別化する
英検やTOEICなど資格試験対策に特化した専門コースを提供することで、相場の1.3倍から1.8倍の料金設定でも選ばれる塾になります。
単なる「学校英語補習」ではなく、「英検準1級合格専門コース」「TOEIC800点突破コース」など、明確な目標を持った専門コースは強い差別化要素となります。 実際に、英検対策に特化した塾では、一般的な英語塾の1.5倍の月謝でも受講希望者が集まっています。 重要なのは、過去の合格実績や平均スコアアップ幅など、具体的な成果データを示すことです。 「当塾の英検2級合格率90%」「TOEIC平均150点アップ」といった実績を前面に出せば、高単価でも「確実に合格できるなら」と保護者は納得します。 また、二次試験対策の面接特訓やライティング添削など、他塾が手薄な部分に特化することも有効です。
資格試験対策という専門性は、相場より高い料金でも「確実に合格できる」という付加価値で選ばれる要素になります。
4技能対応カリキュラムで付加価値を高める
リスニング・スピーキング・リーディング・ライティングの4技能をバランスよく鍛えるカリキュラムは、月謝を1.3倍から1.5倍に設定できる付加価値です。
大学入試改革で4技能評価が重視される中、従来の読解・文法中心の指導だけでは不十分という認識が広がっています。 4技能対応塾では、ネイティブ講師によるスピーキング訓練、リスニング専用教材、英作文の個別添削など、総合的な英語力を育成するカリキュラムを提供します。特に、オンライン英会話と連携したスピーキング特訓や、AIを活用した発音矯正など、最新技術を取り入れることで付加価値を高められます。
4技能対応という総合的なカリキュラムは、高単価でも「実践的な英語力が身につく」という納得感で選ばれます。
成績向上・合格実績で成果を可視化する
定期的な成績向上データや合格実績を明示することで、高い月謝に対する納得感を継続的に得られます。
英語力の向上は短期間では見えにくいため、保護者は「本当に力がついているのか」と不安を感じることがあります。 月次の確認テストで点数推移を可視化し、「入塾時50点だったのが3ヶ月で80点に」という成長を数値で示すことが重要です。 また、英検合格者数や志望校合格実績を教室の実績として蓄積し、「昨年度は英検2級合格者15名」「〇〇高校合格率100%」と具体的に示すことで、指導力の証明になります。 私の知人の塾では、生徒の模試結果をグラフ化して保護者面談で共有し、成長の軌跡を可視化したことで、継続率が25%向上しました。 成果の可視化は、継続率向上だけでなく、口コミによる新規獲得にも直結します。
成績向上や合格実績を可視化すれば、高単価でも「確実に成長できる」という納得感が得られます。
高単価を実現する差別化ができたら、次は教室全体の収益構造を最適化して安定経営を実現する必要があります。
安定経営を実現する価格戦略とは?
安定経営には、月謝単価だけでなく、教室のキャパシティと生徒数を掛け合わせた総収益で考えることが重要です。
多くの塾経営者は「月謝をいくらにするか」だけに注目しがちですが、本当に重要なのは「月謝×受け入れ可能な生徒数」で算出される月間総収益です。 例えば、月謝10,000円で50名受け入れられる教室の月間収益は50万円ですが、月謝15,000円で35名しか受け入れられない教室も52.5万円となり、後者の方が収益性は高くなります。 ここでは、教室の物理的・人的キャパシティを踏まえた最適な価格戦略を解説します。
教室キャパシティから逆算した適正月謝の設定方法
教室の収容人数と稼働時間から逆算して、目標収益を達成できる適正月謝を設定すべきです。
まず、教室の物理的な収容人数(例:1教室10名×3教室=30名)と、週あたりの稼働可能時間(例:週5日×1日4コマ=週20コマ)を明確にします。 次に、目標月収(例:70万円)と固定費(家賃、人件費等で例:35万円)から、必要な粗利(35万円+適正利益)を算出します。 70万円の粗利を40名で確保するなら月謝17,500円、50名なら14,000円、60名なら11,666円という具合に、受け入れ可能人数から逆算して料金を決定します。 重要なのは、キャパシティいっぱいまで詰め込む前提ではなく、稼働率70〜80%で目標収益を達成できる月謝設定にすることです。
目標収益と教室キャパシティから逆算することで、無理のない適正月謝を導き出せます。
継続率を高めて安定収益を確保する運営のコツ
継続率を85%以上に維持できれば、新規獲得コストを抑えながら安定した収益基盤を構築できます。
英語塾は学習塾の中でも、小学生から高校生まで長期間通える科目であり、本来は継続率を高めやすい業態です。 継続率向上のポイントは、①明確な目標設定と段階的達成、②定期的な成果の可視化、③保護者とのコミュニケーション強化の3つです。 特に、「次は英検3級合格」「定期テストで80点以上」など、短期的な目標を設定し、達成したら次のステップを提示することで、「まだ学ぶことがある」と感じてもらい、長期継続につながります。 また、定期的な保護者面談で学習状況を共有し、家庭学習のアドバイスも提供することで、信頼関係が深まります。
継続率を85%以上に保つことで、新規獲得コストを抑えた安定収益の仕組みを作れます。
単価アップと生徒募集のバランスを取る具体策
月謝を上げすぎて生徒募集が鈍化するリスクを避けるため、段階的な値上げと価値提供の向上をセットで進めるべきです。
いきなり月謝を大幅に上げると、新規問い合わせが減少するリスクがあります。 効果的なのは、①既存生徒は据え置き、新規生徒のみ新料金、②学年が上がるタイミングで段階的値上げ(1,000円から2,000円)、③料金アップと同時に新サービス追加、といった段階的アプローチです。 例えば、中2から中3へ進級時に月謝を12,000円から14,000円に上げる際は、「受験学年からは過去問演習と個別添削が追加されます」など、値上げ理由と追加価値を明確に伝えます。 また、無料体験授業の質を徹底的に高め、「この塾なら高くても価値がある」と感じてもらうことで、料金への抵抗感を下げられます。
段階的な値上げと価値提供の向上をセットで実施すれば、生徒募集を維持しながら単価アップを実現できます。
月謝×キャパ×人数の総合的な収益設計ができたら、さらに月謝以外の収益源も確保して経営をより安定させましょう。
英語塾で月謝以外の収益源を確保するには?
月謝以外の収益源を適切に設定することで、月謝を抑えながらも総収益を確保できます。
英語塾の収益を月謝だけに依存すると、価格競争に巻き込まれやすく、収益が不安定になりがちです。 入会金、教材費、検定料など、月謝以外の収益源を戦略的に設定することで、トータルでの収益性を高めることが可能です。 ただし、これらは保護者から見て「納得できる実費負担」として受け入れられる範囲で設定することが重要です。
入会金は、初期費用として10,000円から20,000円程度が一般的です。 入会金は生徒と保護者の本気度を測るフィルターにもなり、安易な入退会を防ぐ効果があります。 ただし、入会金が高すぎると入会のハードルが上がるため、「新学期キャンペーン・入会金半額」などの施策を打つことで、集客時期をコントロールできます。 個人塾では10,000円から15,000円、規模の大きい塾では15,000円から20,000円という設定が多く見られます。
教材費は、使用するテキストや教材の実費に適正なマージンを乗せて設定します。 市販教材を使う場合は年間3,000円から6,000円程度、オリジナル教材やオンライン教材を含む場合は年間8,000円から15,000円という設定が可能です。 特に4技能対応塾では、リスニングCD、スピーキング練習アプリ、英作文添削サービスなど、多様な教材を提供するため、教材費を高めに設定しても納得されやすくなります。 重要なのは、「なぜこの教材費が必要なのか」を明確に説明し、保護者が納得できる形で提示することです。
検定料の代行手数料も、適切に設定すれば収益源になります。 英検、TOEIC、TEAP、GTECなどの受験料に、申し込み代行手数料として500円から1,000円程度を上乗せすることは、業界では一般的です。 塾内で団体受験を実施すれば、会場設営費として1人あたり500円から1,500円を徴収することも可能です。 検定受験を推奨することで、生徒のモチベーション維持にもつながり、合格実績が塾のブランド価値を高める効果もあります。
その他、夏期講習・冬期講習などの季節講習(15,000円から30,000円)、模試受験料(1回3,000円から5,000円)、オンライン自習室利用料(月額2,000円から3,000円)なども収益源として活用できます。
入会金・教材費・検定料・季節講習を戦略的に設定すれば、月謝以外からも収益を確保し、総合的な収益性を高められます。
月謝、入会金、教材費、検定料を総合的に設計することで、価格競争に巻き込まれず、かつ保護者に納得される料金体系を構築できます。 英語塾の料金設定は、単なる相場調査だけでなく、自塾の専門性、教室のキャパシティ、ターゲット層を総合的に考慮して決定すべきです。 適正な価格設定と独自の価値提供を両立させることが、安定した教室経営の鍵となります。

  
  
  
  
