塾での講師トラブル対応法!塾長が知っておきたい問題の解決策

クレーム・トラブル対応

塾を運営していると、講師による様々なトラブルに直面します。

遅刻や欠勤、不適切な指導、生徒や保護者への不適切な対応など、講師の問題は塾の評判に直結する深刻な問題です。

しかし、講師トラブルの種類とその対処法を知り、適切な管理体制を整えておけば、被害を最小限に抑えることができます。

本記事では、10年以上の塾経営経験から、教室で起こりやすい講師トラブルの種類と、それぞれへの効果的な解決策を解説します。

塾でよくある講師トラブルの種類と対応方法

講師によるトラブルには、勤怠問題、指導力不足、不適切な言動、金銭トラブル、生徒との不適切な関係という5つの典型的なパターンがあり、それぞれに適した対応が必要です。

遅刻・欠勤などの勤怠トラブル

講師が授業に遅刻する、無断欠勤する、ドタキャンするなどの問題です。遅刻が発生したら、その日のうちに理由を確認します。交通機関の遅延など正当な理由があれば注意にとどめますが、寝坊や時間管理の甘さが原因なら厳重注意します。繰り返す場合は、書面で警告し、改善が見られなければ契約解除も検討します。無断欠勤は最も深刻で、生徒や保護者に多大な迷惑をかけるため、一度でも発生したら即座に厳しく対処します。代講の手配、生徒・保護者への謝罪、講師への処分を迅速に行います。

指導力不足のトラブル

説明が分かりにくい、質問に答えられない、授業の準備不足などです。保護者から「講師の教え方が悪い」というクレームが来たら、まず授業を見学して実態を確認します。本当に指導力が不足している場合は、ベテラン講師による指導、研修の実施、指導案の作成を義務付けるなどの改善策を取ります。それでも改善が見られない場合は、担当を外す、または契約を更新しないという判断をします。

不適切な言動トラブル

生徒への暴言、体罰、差別的発言、保護者への失礼な対応などです。これは絶対に許してはいけません。事実確認を行い、問題が確認されたら即座に担当から外します。被害を受けた生徒と保護者に謝罪し、今後の対応を説明します。悪質な場合は即刻解雇し、必要なら警察や労働基準監督署にも相談します。他の講師への警告としても、厳しい姿勢を示すことが重要です。

金銭トラブル

給与の不払いを主張される、経費の不正請求、生徒からお金を借りるなどです。給与については、勤務記録と支払い記録を照合し、事実を確認します。塾側のミスがあれば速やかに支払います。講師の記憶違いの場合は、記録を示して説明します。経費の不正請求が発覚したら、返還を求め、悪質な場合は解雇します。生徒からお金を借りる行為は論外で、即座に解雇し、保護者に報告します。

生徒との不適切な関係トラブル

生徒と個人的に連絡を取る、デートをする、恋愛関係になるなどです。これは最も深刻なトラブルの一つで、発覚したら即座に担当から外し、事実関係を徹底的に調査します。未成年の生徒との関係であれば、法的問題にもなるため、保護者、警察にも相談します。解雇は当然で、二度と教育現場で働けないよう、厳しい措置を取ります。

これらの典型的な講師トラブルには、迅速な事実確認と毅然とした対処が解決の鍵となります。

次に、講師トラブル発生時の具体的な対応手順について解説します。

講師トラブル発生時の対応手順

講師トラブルが発生したら、速やかな事実確認、関係者への報告と謝罪、講師への処分、再発防止策の実施という一連の流れが重要です。

トラブルの報告を受けたら、まず事実確認を最優先します。生徒や保護者からの訴えだけで判断せず、講師本人、他の生徒、他のスタッフからも話を聞きます。防犯カメラの映像、授業記録、メールやLINEのやり取りなど、客観的な証拠も集めます。一方的な判断は避け、公平に事実を把握することが重要です。

事実関係が明らかになったら、上司や経営者に報告します。重大なトラブルの場合、教室長だけで判断せず、必ず塾長や経営者に報告し、組織として対応方針を決定します。「自分で何とかしよう」と抱え込むと、対応が遅れ問題が拡大します。

講師に非がある場合、速やかに担当から外します。「調査中」という理由で、一時的に他の講師に代講してもらいます。講師を野放しにしておくと、二次被害が発生する恐れがあります。

被害を受けた生徒と保護者に謝罪します。「この度は不適切な対応があり、申し訳ございませんでした」と誠意を持って謝罪し、「今後の対応としては、担当講師を変更いたします」と具体的な改善策を説明します。保護者の怒りが収まらない場合は、月謝の減額や返金も検討します。

講師への処分を決定します。軽微な問題なら口頭注意や書面警告、重大な問題なら担当変更、減給、契約解除など、問題の程度に応じた処分を下します。処分内容は書面で通知し、記録に残します。労働法規を遵守し、不当解雇にならないよう、顧問弁護士にも相談します。

他の講師やスタッフにも情報共有します。「こういうトラブルがあり、このように対応しました」と伝えることで、同様のトラブルの予防になります。ただし、プライバシーに配慮し、必要最小限の情報にとどめます。

再発防止策を実施します。講師研修の強化、管理体制の見直し、ルールの明確化など、同じトラブルが起きないような仕組みを作ります。

迅速で適切な対応手順を踏むことで、講師トラブルの被害を最小限に抑えることができます。

それでは、講師トラブルを未然に防ぐための採用と管理について見ていきましょう。

講師トラブルを防ぐ採用基準と管理体制

講師トラブルの多くは、採用時の見極めと日頃の適切な管理によって未然に防ぐことができます。

採用面接では、人物を見極めることが最重要です。学歴や指導経験だけでなく、コミュニケーション能力、責任感、社会人としての常識を確認します。「遅刻や欠勤をどう思うか」「生徒や保護者とトラブルになったらどうするか」など、具体的な質問をして反応を見ます。過去のアルバイト先での勤務態度、前職の退職理由なども詳しく聞きます。

採用前に必ず模擬授業をしてもらいます。実際の指導力、生徒への接し方、授業の進め方を確認します。模擬授業で問題があれば、どんなに学歴が良くても採用しません。

身元確認を徹底します。履歴書の内容を確認し、学歴詐称がないか、職歴に空白期間がないかチェックします。可能であれば、前職の推薦状を求めます。特に生徒との不適切な関係でトラブルを起こした経歴がないか、慎重に確認します。

採用時に明確なルールを伝えます。「遅刻・欠勤のルール」「生徒との個人的な連絡禁止」「体罰・暴言の禁止」「守秘義務」など、してはいけないことを文書で渡し、署名をもらいます。「知らなかった」という言い訳ができないようにします。

新人講師には必ず研修を実施します。指導方法だけでなく、保護者対応、トラブル時の報告ルート、やってはいけない行為なども教育します。ベテラン講師をメンターとして付け、最初の数ヶ月は授業を見学してフィードバックします。

定期的に授業を見学します。講師を完全に信頼して放置するのではなく、定期的に授業を見て、問題がないか確認します。生徒からのフィードバックも集め、「講師の対応はどう?」と聞きます。

勤怠管理を徹底します。出勤簿、タイムカード、勤怠管理システムなどで、遅刻・欠勤を記録します。遅刻が増えてきたら、早めに注意します。小さな問題を見逃さないことが、大きなトラブルの予防になります。

講師同士のコミュニケーションも促進します。定期的なミーティング、情報共有、困ったことを相談できる雰囲気作りなどです。孤立した講師は問題を起こしやすいため、チームとして働ける環境を作ります。

適切な採用基準と日常的な管理体制により、講師トラブルの発生を大幅に減らすことができます。

最後に、講師との契約と労務管理について解説します。

講師との契約書と労務管理の重要性

講師トラブルに適切に対処するためには、明確な契約書と適正な労務管理が不可欠です。

雇用契約書を必ず作成します。雇用形態(正社員、アルバイト、業務委託)、給与、勤務時間、勤務地、契約期間、業務内容などを明記します。口約束だけでは、後で「聞いていない」「約束が違う」とトラブルになります。双方が署名し、各自が保管します。

禁止事項を明確に記載します。「生徒との個人的な連絡禁止」「体罰・暴言禁止」「守秘義務」「副業禁止(または許可制)」「SNSでの塾に関する投稿禁止」など、してはいけないことを具体的に書きます。違反した場合の処分も明記します。

解雇や契約解除の条件も記載します。「無断欠勤が○回あった場合」「不適切な行為があった場合」など、どのような場合に解雇できるかを明確にします。不当解雇にならないよう、労働法規に則った内容にします。

給与計算と支払いを正確に行います。勤務時間を正確に記録し、残業代、交通費なども規定通りに支払います。給与明細を発行し、何にいくら払ったか明確にします。給与トラブルは講師のモチベーション低下や信頼関係の悪化につながるため、特に注意が必要です。

社会保険や労働保険の加入も適切に行います。正社員はもちろん、一定の条件を満たすアルバイトも加入義務があります。未加入で問題が起きると、塾側の責任が問われます。

講師の評価制度を作ります。授業の質、生徒の満足度、保護者からの評価などを定期的に評価し、フィードバックします。良い講師は昇給や表彰で報い、問題のある講師は改善指導します。評価が明確だと、講師も納得して働けます。

トラブル発生時の記録を残します。注意指導の内容、日時、講師の反応などを詳細に記録します。解雇や契約解除の際、この記録が証拠となります。「何度も注意したのに改善しなかった」という事実を示せれば、不当解雇を主張されても対応できます。

顧問弁護士や社会保険労務士と連携します。契約書のチェック、トラブル時の対応、解雇の進め方などを専門家に相談できる体制があれば、安心です。特に重大なトラブルの場合、自己判断せず専門家の助言を求めます。

明確な契約と適正な労務管理により、講師トラブルに適切に対処し、塾を守ることができます。